「公募推薦のほうが一般入試より受かりやすいって聞いたけど、本当ですか?」

毎年この時期、生徒さんや保護者さまから一番よくいただく質問です。

結論から言うと、ほぼ誤解です。倍率は一般入試とあまり変わらず、合格最低点はむしろ公募推薦のほうが高い学科が多くなっています。豊中・北摂の高校の進路資料を見ても、近大・龍谷・甲南の公募推薦の合格率は2割前後です。

公募推薦は、高校の先生や受験情報サイトから「一般入試の前哨戦や模試代わりになるから、受けておけば損はない」とすすめられることの多い入試です。

しかし、豊中英語塾の塾生データは違う結果を示しています。2018〜2026年度入試の9年間で公募推薦を受けた塾生14人のうち、関関同立にも合格できたのは2人だけでした。

飛田

毎年「受けちゃダメだよ!」って言ってるけど、本当に受ける人が多いんです、、、

本記事では、大学の入試結果・高校の進路資料・塾生の実際の結果の3つのデータから、公募推薦との付き合い方を考えます。

この記事の結論
  • 公募推薦の倍率は一般入試とほぼ同じ。合格最低点は公募推薦のほうが5〜15ポイント高い
  • 池田・北千里・桜塚の3校では、近大・龍谷・甲南の公募推薦の合格率は2割台
  • 塾生で公募推薦を受けた14人のうち、関関同立にも合格したのは2人だけ
  • 一番のデメリットは社会科目が間に合わなくなること

倍率で比べる:公募推薦と一般入試はほぼ同じ

まずは近畿大学の2026年度入試で、同じ学科の公募推薦(スタンダード方式)と一般前期A日程(スタンダード方式)の倍率を並べてみます。

学部・学科公募推薦 倍率一般前期A 倍率
法学部 法律学科6.0倍5.8倍
経済学部 経済学科7.9倍6.7倍
経営学部 経営学科9.6倍9.3倍
経営学部 商学科7.0倍7.4倍
国際学部 グローバル専攻2.8倍4.3倍
倍率は受験者数÷合格者数(実質倍率)。河合塾Kei-Netの入試結果データより算出。

法学部・経営学部はほぼ同じ、経済学部は公募推薦のほうが高いという結果です。一般入試より明らかに倍率が低いのは、この中では国際学部だけでした。

また、公募推薦は募集人数が少ないぶん、年によって倍率が大きく動きます。たとえば近大の法律学科(公募・スタンダード)は、2025年度の4.2倍から2026年度は6.0倍に上がりました。「去年は低かったから今年も狙い目」とは言えません。

高校別の公募推薦の合格率:近大・龍谷は2割台

大学全体の倍率だけでなく、身近な高校の生徒が実際にどれくらい受かっているかも見てみましょう。大阪府立高校の進路状況資料から、池田高校・北千里高校・桜塚高校の公募推薦の結果をまとめました。

大学池田高校北千里高校桜塚高校3校合計
近畿大学64/180=35.6%66/252=26.2%56/413=13.6%186/845=22.0%
龍谷大学24/103=23.3%67/278=24.1%76/314=24.2%167/695=24.0%
京都産業大学18/26=69.2%22/60=36.7%6/36=16.7%46/122=37.7%
甲南大学13/34=38.2%0/11=0.0%9/62=14.5%22/107=20.6%
合格率=合格者数÷受験者数(延べ人数)。指定校推薦は除く。
3校合計の公募推薦の合格率(延べ人数)
京都産業大学
37.7%
龍谷大学
24.0%
近畿大学
22.0%
甲南大学
20.6%

近畿大学は3校合計で22.0%、龍谷大学は24.0%、甲南大学は20.6%です。

特に龍谷大学は、3校とも合格率が23〜24%でほぼ揃っています。高校による差というより、龍谷大学の公募推薦そのものが安定して難しいと考えたほうがよいでしょう。

なお、この数字は延べ人数です。1人の生徒がスタンダード方式と高得点科目重視方式の両方を受けると、受験者は2人と数えられます。そのため、1人あたりの合格率はこれより少し高くなります。それでも、「推薦だから受かる」と言える数字ではありません。

合格最低点で比べる:公募推薦のほうが高い

次に合格最低点の得点率です。

近畿大学(2026年度・スタンダード方式)

学部・学科公募推薦(200点満点)一般前期A(300点満点)
法学部 法律学科68.5%65.0%
経済学部 経済学科70.5%64.3%
経営学部 経営学科70.5%66.0%
経営学部 商学科70.5%65.3%
文芸学部 文学科76.5%67.0%
国際学部 国際学科66.0%64.0%

龍谷大学(2026年度・スタンダード方式)

学部・学科公募推薦(250点満点)一般前期(300点満点)
法学部68.4%61.0%
経営学部 経営学科72.4%62.3%
文学部 日本語日本文学科78.8%64.7%

甲南大学(2026年度・一般方式の得点率の中央値)

  • 公募制推薦【教科科目型】:67.2%
  • 一般選抜〔前期日程〕:59.3%

どの大学も、文系学科では公募推薦のほうが5〜15ポイントほど高いことがわかります。一般入試は「6割台前半で合格」、公募推薦は「7割前後が必要」というのが、関西の中堅私大のおおまかな目安です。

公募推薦と一般入試は、科目数も満点も違います。得点率をそのまま比べることはできませんが、「公募推薦はミスが許されない試験」という傾向ははっきり出ています。

なぜ「公募は受かりやすい」と言われるのか

倍率は同じくらいで、合格率は2割台、合格最低点はむしろ高い。それでも「公募は受かりやすい」と言われるのはなぜでしょうか。

① 科目が少ない

近大の公募推薦は英語+1科目の2科目です。一般前期Aは英語・国語・選択の3科目です。勉強する科目が少ない=簡単と感じやすいのです。(ただし2027年度入試からは、書類審査と小論文の提出も加わります)

② 「誰と戦うか」が見落とされている

公募推薦と一般入試では、受験してくるライバルの顔ぶれが違います。

  • 公募推薦:関関同立を目指す学力上位層が、滑り止めとして受けに来ます。それに合わせて近大を受ける生徒も多くいます。また塾で見ている限り、例年、浪人生も受けに来やすい傾向があります。
  • 一般入試(近大・産近甲龍):国公立を目指す生徒が併願で受けに来ることは、それほど多くありません。

つまり、産近甲龍の公募推薦は、11月の時点で、関関同立レベルの受験生や浪人生と同じ土俵で戦う試験です。産近甲龍が第一志望の現役生にとっては、決して条件のよい試験ではありません。

豊中英語塾の塾生データ:公募推薦を受けた14人のうち、関関同立に合格したのは2人

ここからは、豊中英語塾の塾生の実際の結果です。

関関同立の合格実績(2024〜2026年度)

大学2024年度2025年度2026年度
関西学院大学6名受験/6名合格10名受験/7名合格12名受験/8名合格
関西大学2名受験/2名合格5名受験/5名合格6名受験/4名合格
同志社大学4名受験/2名合格6名受験/4名合格4名受験/2名合格
立命館大学3名受験/3名合格2名受験/1名合格1名受験/1名合格
大学ごとの実人数。1人が複数の大学に合格した場合は、それぞれの大学で数えています。

特に関西学院大学は、3年間で28名が受験し、21名が合格しています。詳しくは2026年度 大学別 合格者をご覧ください。

公募推薦を受けた塾生は14人、関関同立にも合格したのは2人だけ

一方で、2018〜2026年度入試の9年間で、公募推薦を受けた塾生は14人います。そのうち、関関同立にも合格できたのは2人だけでした。

公募推薦を受けて関関同立にも合格
2人/14人
  • 池田高校の生徒:11月に武庫川女子大学の公募推薦に合格し、一般入試では関西学院大学(総合政策学部・文学部・社会学部)に合格しました。11月の時点で英語がほぼ仕上がっていて、塾の日本史テストでも毎回8割を超えていました。(合格体験記はこちら)
  • 刀根山高校の生徒:英検2級を取得していて、関西学院大学 法学部に合格しました。(合格体験記はこちら)

2人に共通するのは、公募推薦の時点で、すでに英語の力がついていたことです。一方、公募推薦を受けて不合格になってしまった塾生には、はっきりした共通点がありました。それが「社会科目が間に合わなかった」ことです(詳しくは「公募推薦のデメリット」の章で説明します)。

豊中英語塾が「関関同立に合格したいなら公募推薦は受けない」と生徒に伝えているのは、このためです。実際に、公募推薦を受けずに関関同立に合格した塾生の体験記もあります。

公募推薦のメリット

ここまで読むと「公募推薦を受ける意味はないのでは?」と思うかもしれません。公募推薦にもメリットはあります。ただし、誰が受けるかによって、メリットの大きさは大きく変わります。

メリット① 受験のチャンスが1回増える

公募推薦の一番のメリットは、「受かりやすいこと」ではなく「チャンスが1回増えること」です。

たとえば合格の可能性が5割の大学なら、1回だけ受けると不合格の可能性は5割です。公募推薦と一般入試で2回受ければ、単純計算で両方とも落ちる可能性は2.5割まで下がります。

産近甲龍が第一志望の生徒にとっては、志望校を2回受けられること自体に大きな価値があります。近大・龍谷・甲南の公募推薦は併願が可能で、合格しても他大学の一般入試を受けられます。

メリット② 年内に合格を確保できる

11〜12月に合格をもらっておけば、年明けに気持ちの余裕を持って一般入試に臨めます。先ほどの池田高校の生徒も、公募推薦で合格したことで、一般入試を関学一本に絞って集中できました。

年内に合格を確保することが目的なら、近大・龍谷・甲南だけで出願を組むのはおすすめしません。高校別データでは、摂南大学(58.3%)・追手門学院大学(57.7%)・大和大学(54.7%)などは3校合計の合格率が比較的高くなっています。こうした大学を組み合わせたほうが、年内合格の可能性は高くなります。

メリット③ 英語の勉強は一般入試にも役立つ

公募推薦で求められるのは「基礎〜標準問題を取りこぼさない力」です。特に英語は、公募推薦と一般入試の差が小さい科目です。英語を仕上げることは、そのまま一般入試の対策になります。

公募推薦のデメリット:社会科目が間に合わなくなる

「公募推薦は受けておけば損はない」とよく言われます。しかし、この考え方には「準備に使う時間」という損が入っていません。

公募推薦の一番のデメリットは、一般入試に必要な社会科目(日本史・世界史)の勉強が遅れることです。

豊中英語塾で公募推薦を受けて不合格になってしまった塾生には、共通して「社会科目が間に合わなかった」という傾向がありました。

公募推薦は英語+1科目の2科目で受けられるため、9〜11月はどうしても英語と国語の対策が中心になります。その間、社会科目の暗記は後回しになります。ところが関関同立の一般入試では、社会科目は英語の次に配点が高く、現役生が最後まで伸ばせる科目でもあります。

公募推薦を受ける受験生の秋〜冬の流れ(近大の2027年度入試の日程をもとにした例)

  1. 9〜10月

    公募推薦の過去問対策・小論文の準備

    英語+1科目の対策と、出願書類の小論文が中心になる。社会科目の暗記はここで止まりやすい。

  2. 11月中旬〜下旬

    出願・試験

    近大の法学部・経営学部は11月21日・22日に試験。

  3. 12月上旬

    試験・合格発表

    近大の経済学部は12月5日・6日に試験。合格発表は12月中旬。

  4. 12月〜1月

    社会科目を取り戻す

    不合格だった場合、ここから社会科目を仕上げ直すことになる。一般入試までは約2か月しかない。

  5. 2月上旬

    関関同立の一般入試

    社会科目は英語の次に配点が高い。秋に止めた分が、そのまま点数の差になる。

つまり、公募推薦の対策に秋の時間を使うと、公募推薦に落ちたうえに、一般入試の社会科目も仕上がっていないという一番避けたい状態になりやすいのです。

2027年度入試からは、さらに時間が取られる

2027年度入試では、公募推薦の準備にかかる時間がさらに増えます。近畿大学の公募推薦(スタンダード方式)は、次のように変わっています。

学部出願締切試験日合格発表
法学部・経営学部11月14日11月21日・22日12月2日
経済学部11月28日12月5日・6日12月16日
河合塾Kei-Netの2027年度入試情報より。必ず大学の募集要項で確認してください。
2027年度入試で変わった点
  • 選考に書類審査が加わり、小論文を出願書類として提出する:これまでの「英語+1科目の教科試験だけ」ではなくなりました。小論文を書く時間が、新たに必要になります。
  • 経済学部は試験日が12月上旬:公募推薦の対策が12月まで続くことになり、一般入試までの残り時間がさらに短くなります。

背景には、文部科学省のルール変更があります。2026年度入試から、年内入試で学力試験を行う場合は、小論文・面接・提出書類などと組み合わせて評価することが条件になりました。今後、ほかの大学の公募推薦でも、同じように学力試験以外の準備が増えていく可能性があります。

つまり、「2科目だけで受けられる手軽な入試」とは、ますます言えなくなっています。小論文の準備まで加わると、社会科目に回せる時間はさらに減ります。

公募推薦を受けるなら、秋以降も社会科目の勉強を止めないことが絶対条件です。それが難しいなら、公募推薦は受けずに一般入試に集中したほうが、結果的に合格の可能性は高くなります。

公募推薦が向いている人・注意が必要な人

向いている人
  • 産近甲龍が第一志望の人:志望校を受けるチャンスが1回増えます。
  • 英語が得意、または英語を得点源にできる人:2科目受験では英語の比重が大きく、近大の高得点科目重視方式のように英語を2倍にできる方式もあります。
  • 基礎問題でのケアレスミスが少ない人:7割以上を安定して取る力が必要です。
注意が必要な人
  • 関関同立が第一志望の人:公募推薦の対策に秋の時間を取られると、文系の生徒はほぼ必ず社会科目が間に合わなくなります。塾生でも、2018〜2026年度入試の9年間で、公募推薦を受けて関関同立にも合格できたのは14人中2人でした。公募推薦に落ちた塾生にも、社会科目が間に合わなかったという共通点があります。
  • 「一般入試より簡単だから」という理由だけで公募推薦にかける人:合格率は2割台、合格最低点は一般入試より高めです。公募推薦だけに頼る計画は危険です。
  • 高校の評定平均が出願条件に届いていない人:大学・方式によっては評定平均などの出願条件があります。必ず最新の入試要項を確認してください。

公募推薦のよくある質問

Q
公募推薦は併願できますか?
A

近大・龍谷・甲南の公募推薦は併願できます。合格しても、他大学の一般入試を受けられます。ただし大学・学部・方式によっては専願の場合もあるので、必ず募集要項を確認してください。

Q
関関同立が第一志望でも、公募推薦は受けたほうがいいですか?
A

豊中英語塾ではおすすめしていません。2018〜2026年度入試の9年間で公募推薦を受けた塾生14人のうち、関関同立にも合格したのは2人だけでした。公募推薦の対策に秋の時間を使うと、社会科目が間に合わなくなりやすいからです。

Q
公募推薦の合格最低点はどれくらいですか?
A

2026年度の近大・龍谷のスタンダード方式では、文系学科で7割前後が目安です(例:近大 経済学科70.5%、龍谷 経営学科72.4%)。一般入試より5〜15ポイント高い学科が多くなっています。

Q
公募推薦に落ちると、一般入試で不利になりますか?
A

公募推薦の結果そのものが、一般入試の合否に影響することはありません。ただし、公募推薦の対策に時間を使った分、一般入試の準備(特に社会科目)が遅れやすくなります。

まとめ

  • 公募推薦の倍率は、一般入試とほぼ同じか、学科によっては公募推薦のほうが高い。
  • 池田・北千里・桜塚の3校では、近大・龍谷・甲南の公募推薦の合格率は20〜24%(延べ人数)。
  • 合格最低点は、文系学科では公募推薦のほうが5〜15ポイント高いことが多い。
  • 公募推薦には、関関同立を目指す上位層や浪人生も受けに来る。
  • 豊中英語塾では、2018〜2026年度入試の9年間で公募推薦を受けた14人のうち、関関同立にも合格したのは2人。どちらも公募推薦の時点で英語がほぼ仕上がっていた。
  • 公募推薦の一番のデメリットは社会科目が間に合わなくなること。公募推薦に落ちた塾生には、この共通点があった。2027年度入試からは小論文の提出なども加わり、時間の負担はさらに大きくなる。
  • 公募推薦はチャンスを1回増やす手段。産近甲龍が第一志望なら受ける価値は大きいが、関関同立が第一志望なら、公募推薦の対策で社会科目が遅れないよう注意が必要。
データの出典と注意事項

数字は各大学が公表している入試結果、河合塾Kei-Netに掲載された2026年度・2025年度の入試結果データ、大阪府立高校の進路状況資料、河合塾Kei-Netの2027年度入試情報、および豊中英語塾の塾生の結果によるものです。倍率は受験者数÷合格者数で計算しています。出願条件や試験方式は年度によって変わるため、出願の前には必ず各大学の最新の入試要項を確認してください。

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